01 はじまりの風声
視界いっぱいに広がる、忌々しいほどの青い空と白い雲。
目の前の空で私は自分が寝転んで仰向けであることを知る。どうしてもその仰向けの視界が嫌で、横にごろりと寝返ると、目の前に自分の手足が見えた。
そうして私は起き上がった。死んだはずの自分がここにいる。
そこまで思い出して、私はここが死後の世界だと知った。
「おい」
ふと自分の姿に影が差して、低めのアルトボイスが降ってきた。
見上げればそこには、頭身よりも大きい斧なんていう物騒な物を担いだ少年がいて、こちらを見ている。
久々に人と話すものだから一瞬日本語を忘れ、返事をせずに彼を見る。
「貴様は抗うのか?」
若干眉間に皺を寄せている彼は表情を変えずに私にそう言う。その言葉が、とても神聖な一言のように私は思えた。周りの草が風に揺られて囁く。風が強く吹いて甲高く鳴く。
「……何に?」
やっとのことで発した言葉を受けても、彼はぴくりとも表情を変えずにこちらを見ていた。
私の視界いっぱいに、空と彼。
この視界だけで世界が生成されているような幻覚を感じながら、目の前の彼が初めて私から視線を逸らして目を伏せた。
「神にだ」
ふわりと始まりを告げる風が彼の髪を、世界を揺らす。ざあざあと風が鳴って、運命的な予感がした。
――それが私の死後の戦いの始まりである。