愛じゃない、恋じゃない

 


 いつもの校長室のブリーフィング。
 作戦の詳細を告げる会議で、今日もそれは起きた。

「次のオペレーションは以上のメンバーで――」
「異議あり!!」

 ゆりの声を遮って、私は思い切り手を上げる。
 皆の反応は様々だが、大体が呆れてるか気にとめてない様子。
 ただ一人、ゆりだけが青筋浮かべながら微笑んでいる。けどその顔は諦めが混じっている、いわゆる『わかってはいたがやっぱり』という顔をしていた。

「いつものことだとは思うけれど。一応聞いてあげるわ……何かしら、さん」
「ゆりっぺ、なんで私がメンバーに入ってないんですか!」

 盛大にため息をつかれた。けど私はいつも通りめげない。さらに言及していく。

「私ならゆりっぺの為に、役にたちますよ!!」
「それはいつも、毎日、耳にタコができるほど聞いてるわ」
「なら何故アホの野田がメンバー入りで、私はメンバー外なんですか!!」

 私はゆりっぺに忠誠心を誓って、全身全霊で尽くしている。
 だから私はオペレーションから外される度に、こうして意義を申し立てを行っていた。
 他の皆から見たらもはや『恒例』である。慣れを通り越して当たり前の空気。
 しかし、私の発言が気にくわなかったであろう約一名が立ち上がる。

「……貴様、もう一回言ってみろ」
「アホの野田」

 私はリクエストされた通りに、彼が聞きたい部分をリピートしてやる。
 首もとにハルバードを突きつけられたので、私も手の中にある長槍を彼の首元に突きつけた。

「……殺すぞ」
「やってみろアホ」
「貴様……!!」

 野田と睨み合うと、日向が慌てて仲介に入る。
 私も野田も武器を手にしているせいか、いつものことと言えども日向は冷や汗でいっぱいだ。

「まーまー、落ち着けよ!ゆりっぺにはゆりっぺの考え方があるんだし!な!な!」
「そうよ。何か文句あるの?」
「……う。無いです、すいませんゆりっぺ」
「わかってくれればいいのよ。ありがとう、さん」

 聞き分けのよくなった私の頭を、ゆりっぺはにこやかに撫でる。

「あなたにはあなたの役割があるの、よろしくね」
「はい、ゆりっぺ」

 彼女の手を取って、手の甲にキスをする。毎回やってる、私なりの忠誠の証だ。

「さすが、忠犬を二匹もつれてるだけあって扱いが上手いな」

 藤巻のつぶやきは放っておいて、私は解散を宣言するゆりっぺの後ろ姿を追いかける。
 途中、ぶすっとした面の野田を横目に見た。
 同じ女性の特権で、私はゆりが嫌がるところ以外は、どこまでもついていける。
 私は勝ち誇った笑みを見せつけるように、野田の真横を通過する。ひらひらと、煽りのために手を振るのも忘れない。
 野田は歯を食いしばりながら、地団太を踏んでいた。


▲top