ああ、もう!何これ何これ!何なのよ!!と、私は心の中でかなり荒れていて、誰も何も言っても聞いてもいないのに耳を手で塞いで首を振った。
(分かんない分かんない、訳分かんない!)
何故荒れているかと言うと、何もしていないのに内側から鼓膜ごと揺さぶる激しい動悸が原因だった。さっきから動悸が止まらない。止まる気配すら見えなくて私はまたぶんぶん意味なく顔を左右に振った。
「…何だよ」
河原にて皆でわいわいとバトルしたり雑談してる中、首振る合間に盗み見ていた私の視線に気付いたキョウヤが5m先から怪訝そうにこちらを見ている。口が引きつって動悸がまた大きくなった。
「ななな何でもないわよ!」
「…何でもない癖になにテンパってやがる」
「何でもないったらー!!」
キョウヤはムキになる私が不服らしく、目の前まで歩いてきた。私は両頬抑えて彼につい背を向ける。今までイイライバルだと思っていた。だけど先日マドカが私に言ったのだ。
『ってキョウヤのこと実は好きなんでしょ?いつも見てるものね』
言われて意識したら駄目だった。毎回会う度ドキドキが止まらずに、もはや普通に喋ることすら困難だった。知らなかった。私がこんなにキョウヤのことを好きなんて、自分のことながら知らなかった。
「おい、聞いてんのか」
「え!?」
頭の中パニックで目の前のキョウヤの発言を何も聞いてなかった。小さく彼がため息をついているのが見えている視界の隅っこに、笑顔のマドカがこっちを見ている。
「…こないだっから何なんだ、てめぇは。変なもんでも食ったのかよ」
寧ろ何も食べてない。キョウヤのことを想って喉も通らないのだ。そうかこれが恋なのか!
心臓の動悸をBGMに私の頭は冷静なの混乱しているのかサッパリ分からないままくるくる回っていた。
「食べてないよ、なにも食べてない、キョウヤのせいで何も食べれないよ!」
「は?」
「キョウヤのこと考えると何も食べれないの!」
「!…おい、そいつは」
少し驚いたキョウヤは私にゆっくり手を伸ばしたけど、キョウヤの細くてでもたくましい指が私の皮膚に触れた途端に私の頭はオーバーヒートして思考回路が爆発した。
「あ、あんた私に一体なにしたのよー!!」
ここまできたら恋とか甘酸っぱいものじゃすまない!キョウヤが何か私にしたんだ、私の心臓に、私の心に何か仕掛けたに違いない!
そう思わないと私のオーバーヒートした頭はどうにかなってしまうのだ。皆が見ているなんてお構いなしに、意味の分からないこと叫んで耳たぶ抑えながら走って逃げた。