「いやー!無理無理!!」
「もー、まだそんなこと言ってるのね…」
私はB-Pitの中の机の下に立てこもっていた。もう外に出るのすら億劫で、このまま机の下に永住してやろうかとすら思った。誰か住民票ください、現住所を書き換えます!
「よーっす!銀河いっかー?」
「あら正宗、こんにちは。銀河は今いないわよ」
「なんだよ今日こそぶっ倒そうと思ったのによー。ちぇっ」
私が机の下の永住を覚悟していると、慌ただしい足音と一緒に正宗が店の中に駆け込んできた。私はギクリと体を堅くして気付かず帰ってくれるのを全力で期待した。
下からそーっとマドカの顔を見ると、名案でも浮かんだような明るい笑顔。嫌な予感しかしなかった。
「そうよ!正宗ナイスタイミング!ほら、見て見て!」
「うわっ!引っ張らないでよ!私は机の下と結婚するのー!」
「あれ、?」
正宗の驚きようよりも今の姿のまま引っ張り出されることに抵抗しようとしたが、不意をつかれた為呆気なく私は正宗の前に突き出された。
「ほら、似合うでしょ?」
「うぬぬ……人に見せるつもりなかったのに……」
普段スカートをはかない私はマドカの遊び心に付き合わされてスカートをはかされていた。予想よりスカート下が風通りがよすぎのと、普段はかない分羞恥心二倍増で私は顔に血がほとんど集まっているに違いない。
「……」
唖然としている正宗を目の前に、笑うなら笑いやがれ!と私は腹をくくったが、次の瞬間両手をがっつり握りしめられた。
「す、すっげー似合う!可愛い!!なんで見せねぇの!?勿体無いじゃん!」
「え」
笑顔で正宗は私の両手を包んだまま上から下まで見直して、また笑った。
「ホント可愛い!これからスカートはけばいいじゃんか!」
「えー……でも」
「は普段女の子らしくしてなかったから自信ないのよ」
私の言おうとしたことを代弁してくれたマドカを、正宗がそうなのか?とキョトンとした顔で見ていたが、すぐに私の顔に戻ってくると彼はいつもの歯を見せた笑顔を私に向ける。
「超似合ってるぜ!俺が言うんだ、間違いないっての!」
その笑顔とその殺し文句に胸を撃たれた私は、な!と何度も同意を求めてくる正宗に向かって自然と微笑んだ。
「だといいなぁ」
急に、包まれた両手と心臓が暖かくなったのは正宗の力に間違いなかった。