「あーのーなぁ……」
「なーにーさー……」
怒りだ。こもっている、怒りが。怒りが込もっているぞ、翼の声には……!!だが離れない。私を引きずりながら廊下をのっそり歩く翼から離れない私は今や廊下の雑巾だ。
「なんで邪魔するんだ……」
「ふっ……翼が好きだからさ」
「……俺はお前より仕事のが好きかもしれない」
「何それ!!酷い!!」
だから離せと言われたが、離す気はさらさらない。暗黒星雲に来て働き詰めの翼は休むべき、そう休むべきなのだ。だからもう先手は打った。
「ふっ……実は大道寺にお願いして翼に休み貰ってるのさ!」
「は!?」
だから仕事しようにもしなくていいのさ!!と言えば、帰ってきた言葉は、馬鹿なのか。酷い。酷いわホントに。だけどしかし、ため息をついた翼は近くの空き部屋に入ってソファーに腰をかけた。
「はぁ……負けた。ホント、お前には敵わないな」
「よっしゃ!!」
「全く、大道寺に何を言ったんだ?何か脅迫でもしたのか」
「そんな!私の細やかな気持ちを形にしたまでよ!!!」
「それは賄賂だ!!」
翼の鋭いツッコミをぐはぁ!という悲鳴と共に受け止めたら、彼は笑った。
「もうお前がそこまでしたなら、休むことにしよう」
「手伝ってあげようか?」
「……悪戯は無しだからな」
「えー?……ちぇー」
「あのなぁ……」
「んじゃ膝枕」
「……それで手を打つか」
交渉成立すると翼は私の膝に頭を乗せて来客用の長いソファーね寝転がった。
「あぁ、肉が程よくついてるからいい具合だな」
「よし殴る」