「氷魔、聞いてる?」
「聞いてますよ、一応は」
その『一応は』とは何よ、と私はが頬をふくらませる。氷魔は銀河達が独楽村から旅立ってからどうにも上の空でいけない。…いけない、というか私がつまらない。只でさえ人のいない独楽村だ、氷魔と北斗以外に誰と話せと言うのだ。
あれこれ考えてる間に氷魔はまたインマイワールド。
「聞いてる?氷魔」
「あぁ…そうですね」
「話聞いてないな」
はぁ、と重いため息をついてからぼんやりしている氷魔の頭を平手で打ちつけた。もちろん八つ当たりである。
「痛っ!」
「…北斗どこ?」
「どうしたんですか、突然」
「いいから北斗どこだって」
腹がたったのだ。だからもう可哀想な子かもしれんが犬の北斗と語り合おう。多分氷魔の愚痴ばかり言う私に嫌な顔するだろうが我慢してもらおう。
そう算段をたてていると、目の前の氷魔はクスクス笑い始めて、もちろん私はカチンときた。
「、拗ねてます?」
「拗ねてないわバカ。ボケ。豆腐の角に頭ぶつけてしね!」
それから私だんまりを決め込んだ。彼に背を向けて歩きだそうとすると、トントンと軽く肩を叩かれたので振り返りざまにヘッドロック決めようと思い切り振り返る。
すると私の行動を読んだのか氷魔は一回しゃがんでヘッドロックをかわすと、私を包み込むように抱きしめて額にキスをおとした。
「…氷魔」
「はい、何がですか?」
「…なんでもないわ馬鹿」
「なんとでもどうぞ」
私は氷魔に向き合って、背中に手を回してまるで人形に抱きつくようにぎゅっと抱きついてきた。それに答えるように彼も私を抱きしめ返してきた。