「あの、ね」
「ん、何だよ?」
ああもうこの目の前の男と来たら、私のどもり具合と呼び出しで二人きりというこの状況で分からんものなのか。悪態つきながら切羽詰まる私の頭の中はもうごちゃごちゃ。それなのに呼び出された正宗ときたらキョトンとしちゃって本気で分からないという顔。私はきっと怒っていい筈だ。
「私ね、正宗に、い、言いたいことがあるの!」
「?……いや、だから何だよ?」
こいつ殴り倒したい。そう思う反面、私の心臓はこれから言おうとする言葉を思って暴走している。伝えたい言葉と、それに返ってくる正宗の反応シュミレーションに大忙しの私は、かみながらも着々と発言する雰囲気の土台を作りにかかった。
「私は、ね。正宗といると凄く楽しいの。それで隣にいると凄く嬉しいんだ」
「俺も、だけど……?」
止めて、そこで名前呼ぶのは反則だよ。私は正宗が見れなくなって俯いた。その私に、どうやらやっと正宗が雰囲気を察して声に緊張感が出てきた。今なら言える!この雰囲気なら!
「私、正宗のこと……」
「待ったぁぁー!!」
顔を上げてここ一番を言おうとした私のセリフに正宗の静止が被さって、私は止まってしまう。それから数秒、沈黙が続いた私は決意をした。
「……殴っていいよね?」
私の心のモノローグではない。実際正宗な言った言葉だ。私は今度こそ怒っていいのだと悟ったからの発言だ。そんな私の静かなる怒りの声を聞いた正宗が慌てた様子で両手を左右に全力で振った。
「い、いやいやいや!悪かったけどちょっと待ってくれ!!」
慌てた様子の正宗はどもった後、私の両手を突然がっしりと掴んできたので私は不意をつかれて目が点になった。そんな私を下からのぞき込むように真っ赤な顔で迫ってきた正宗から目が離せない。
「俺、お前が好きなんだ!大好きなんだよ!!」
「……は?」
さらに追撃。私は間抜けな声を上げて正宗を見返す。私の告白を遮って何かと思ったら逆に告白されたって、どんな状況だろうかと私は正宗の次の言葉を待った。
「や、なんかよー、女の子に告白させるってちょっと、情けないじゃん?」
「……それで私が告白するって気付いて止めたの?」
「わ、わりーかよ!!」
ぷっと吹き出した。一番にこだわったり、男としてのプライドにこだわったり面倒な男だなと思う反面、私は嬉しくなって正宗の手を握り返した。
「私も正宗大好きだよ」