白くは無いが滑らかな肌、サラサラの銀髪、細くて綺麗な指。細くて綺麗なのは指だけじゃないが敢えて細かい所は置いておこう。とにかく全女性嫉妬の容姿端麗を持っている彼を睨みつけるように見ながら、私は加えていたストローの先にある炭酸飲料を吸い上げた。
「……」
「はい何でしょう翼さん」
「視線が痛いんだが」
「やだわ翼さん、なにそれ自意識過剰ですの?」
「…………」
ストローから離した口の端を持ち上げて意地悪く敬語で応えると、翼は大きなため息をついて低めのソファーに深く腰掛けなおした。
暗黒星雲の最早たまり場と化してきている大道寺の部屋、応接室のような配置の家具であるソファーで翼は居心地悪そうに新聞を広げ、私は大道寺の机で本人がいないことをいいことに炭酸飲料片手に回る椅子に座って机越しに翼をみていた。
(翼って、新聞読むんだ……)
私を諦めて新聞読みを再開した彼は、肩より後ろからふと垂れてきた銀の髪を右手で何気なくかきあげる。その仕草の指先が余りにも綺麗な動作をしていたので、私は引き寄せられるように翼の後ろに回って彼の髪の毛を両手でかき集めた。
「……今度は何だ」
「いや全女性が大嫉妬の綺麗さだなぁと思ってね」
「あまり嬉しくないぞ」
でも誉めてんのよと言えば物言いたげな目で振り返りかえるのを途中で止め、新聞読みを再開させた。私は手櫛で、さらさらして止まることを知らない滑らかな髪の毛を暫く弄ぶ。
「ね、三つ編みしていい?」
「……駄目だ」
あっさり断られて私は頬を膨らませるが、新聞に目がいってる翼はそんな私の顔なんか見てないだろう。悔しくなった私はかき集めた手の中の銀髪に、わざとらしくリップ音を響かせてキスをした。
その音に反応した翼が、ゆっくりと此方を忌々しそうに振り返る。私の顔には張り付けたような笑顔。
「……今なにした」
「翼の頭についてる私の愛しい銀髪にキス」
私、綺麗な翼の銀髪『が』好きなの。とわざとらしく強調して張り付けた笑顔を深めると、彼はため息一つ。その後に私の胸ぐら片手で掴みあげて引き寄せた。視界いっぱいに翼のドアップ。それからすぐに私を離して新聞に戻った彼を後ろから抱きついて、彼の頬に自分の頬をすりつけた。
「翼さん、今の何ですかな?」
「……髪と言わず、俺にもしてくれ。たまには」
「拗ねたんですねー、自分の髪に嫉妬ですか?嫉妬するなら引っこ抜いてあげようか?」
「やめてくれ」
頬をスリ寄せた翼の肌はさらさらでハリがあって、やっぱり正直妬いた訳である。