「チーユンはお前が好きだ」

 と、目の前の彼は私に申された。こちらを強い眼差しで見据えて、少し緊張した赴きで私が口を開くのを待っていた。
 お互い椅子に座って、同じ目線でお茶を飲んでいるときにそう言ったチーユンの発言。実は吹きそうになったなんで口が裂けても言えやしない。私と彼の間には微妙な空気という緊張感が漂っているからだ。

「……言っておくが、友人としてじゃないからな。一人の女性としてって意味だ」
「いや、わ、分かっております……よ?」
「なんで敬語なんだ」

 いちいち念を押されずとも分かっている。敬語にもなるのは私まで緊張が伝線したからだ。何故にこのタイミングで告白したんだろうか。まるで私が告白しようとしたのを知っていたようなタイミング。

、返事聞かせてくれ」
「…………」

 珍しく頬を染めたチーユンの目の奥が少し揺れた。普段カッコかわいいと思っといたのだが、今は絶好調に可愛い。

「……好きじゃないよ」
「!!」

 だから、少しからかおう。告白しようとした私の心意気を折ったちょっとした仕返しだ。もちろん告白された方が嬉しいに決まってはいるが。

「そ、そうか……」

 そう言って彼は目をそらす。私は椅子から立ち上がり、机の上に乗り出してチーユンに近づいてそらした頬に手を添えた。

「チーユン」
「なんっ……」

 こちらを向いたチーユンにマウストゥマウスで柔らかいキス。目を閉じている私には見えないがなんとなく分かる。チーユンが驚いて目を見開いている様子が浮かぶようだ。

「っ!!」
「何?」
「好きじゃないんだろ!!」

 真っ赤になった彼が椅子の上に立ち上がって怒り出す。私は乗り出したまま彼を少し見上げて笑った。

「うん、『好き』じゃない。だって『大好き』だもん」
「っ……!」

 そう言う私に呆気にとられて数秒固まった彼は、動き出すと頬を膨らませて私を不満そうに見ながら呟いた。

「……ずるいぞ」
「言葉のアヤじゃない」
「ならチーユンだって『好き』じゃない」
「じゃあ何?」

 彼は乗り出した私の両頬に両手を添えて、もう一度キスをした。私が上目遣気味に見上げてまた笑った。

言葉のアヤ

(愛してる、だ。彼はそう言ってあまりみない穏やかな笑顔で私の額に額をくっつけた)