竜牙は猫みたいに気まぐれだ。
だからこうしてガンガンギャラクシーの臨時メンバーになったり、私になついたり、私も竜牙になついたりして、そんな事が彼の気まぐれで起きたりした。つまりは私と竜牙は現在進行で絶賛両想いな訳で。
「膝を貸せ」
「……はい」
控室のベンチに座っていたら竜牙に突然そう言われたので、私は一瞬だけ呆気にとられたがすぐに両手を両膝からどけて場所を明け渡した。
すると彼は何も言わずにごろりとベンチに横になって、明け渡した私の膝に頭を乗せて瞼を閉じる。最初こそ上を向いてごろごろしていた彼は、同じ部屋に居る銀河と正宗の視線に居心地の悪さを感じたのだろうか、私(つまりは壁)の方に顔を向けて昼寝を再開させた。
「ラブラブだよなー……」
「あの竜牙も、の前では型無しなんだな」
二人が笑顔でそう言うと、寝ていた私の膝上の猫は彼らの方を見、目を細め睨みつけた。その迫力やまさに龍の如し。
「…………」
(やべ、言いすぎた!?)
(お前のせいだぞ正宗!)
(はァ!?なんでだよ!銀河も同罪だろ……!)
睨まれた蛙状態の二人は背筋が自然と伸びた状態で冷や汗をかいて硬直し、目で会話をする。気まぐれが代名詞の彼はそんな二人を見てからしばらくして興味を無くしたのかすぐ私の膝に戻って目を閉じた。
「ふぃ~……あぶねーあぶねー」
「いやぁ~がいたから助かった……」
「別に私、何もしてないけど……」
そう言いながら膝もとの彼の髪の毛を自然と撫でる。本当に猫でも膝に乗せているように錯覚するが、よく考えれば膝もとで寝ているのはあの竜牙だ。こんな関係になるとは夢にも思わなかった。そして自惚れのようだが私が一緒に居る時の竜牙の寛大さには驚かされる。
(まぁ、寛大だろうが短気だろうが、好きになっちゃったからには今はどっちでもいいんだけどね)
自分の中で彼への愛を確かめると、自然とキスしたくなって私は彼の髪の毛を優しくかきあげるとこめかみへ唇を落とす。そのしぐさを受けた竜牙がぱちりと目を開けて、こちらを見てきたので私もそれに返事をするように見返す。
「ごめん、嫌だった?」
「……いや、構わん」
一言だけ言った彼の黄金色の目が瞼に覆われてまた見えなくなり、穏やかに呼吸を繰り返す。微笑ましい彼に自然と口元が緩む。
「何だよ今の!ノロけるなら余所でやれよおおお!」
「わ、悪くは無いけど場所は考えた方がいいぞ!」
正宗と銀河が横やりを入れるものだから雰囲気に関してはぶち壊しなわけだが、そんな最中、控室の扉をリズムよくノックする音が聞こえたかと思うと、まどかが扉の隙間からこちらをちらりと覗きこんできた。
「、ちょっといい?」
「私?」
その言葉に先程まで文句を言っていた二人がぎくりと肩を震わせて、まるでブリキのおもちゃのようにギギギと変な音を立てて私の膝元を見る。私が「でも今は竜牙が……」と言いかけると、半分寝ていたのであろう彼はゆっくりと起き上がって私の髪をくしゃりと触る。
「構わん、行ってこい。俺には用事が出来た」
「いいの?ありがと」
膝から竜牙の重みが消えて少し寂しかったが、用事があるのでは仕方ないと私は立ち上がり、扉へと向かった。まどかが早くと私を催促すると、室内の二人は逆に私を引き止める。
「や、ちょ、ちょっと待て!!行かないでくれ!!!」
「頼むまどか!を連れて行かないでくれえええ!!」
「貴様らには俺から話がある」
逃げようとしたのか、私にすがろうとしたのかは定かではない二人の首根っこを竜牙がしっかりと掴んで離さない。私は今後この控室で何が起こるであろうかを想像して苦笑しながら、二人に手を合わせて扉を閉めた。