とにかく廊下を全力疾走。
(途中でカニを轢いたとかそんなことは気にも止めないで)
一番目の角を左に曲がる。
(また誰かを轢いた。もしかしてダンとレイキだったかも)
部屋を8つ通り過ぎる。
(途中でトビオの部屋の扉が開いたもんだからいっきりぶつかった。扉は閉まった)
鼻を押さえてその次の角を右。
(角で深海にぶつかりそうになって怒られた。ごめん)
水地の扉の前だけ歩った。
(水地にぶつかった日には体育館裏で殺される!!)

 それを過ぎたらまた直進さらに次の角を右に曲がって真っ正面の大きなドアを開けて叫んだ。

「竜牙様ー!!」
「…また貴様か」

 彼は相変わらずやることがないのかやりたいことがないのかエルドラゴを眺めていたちなみにちらりとも此方を見ない。そこにドアをきちんと閉めて私がずかずかと進んでいく。今日も相変わらず長椅子で腰を落ち着けている竜牙様の隣に座った。
 にこにこしながらしばらく竜牙様を見つめていると彼はやっと此方に目をやって、ついでに目を細めて睨みつけた。

「早く用件を言え」
「特に無いです!」
「なら出ていけ」
「あ、用件ありました!」

 彼が構ってくれて言葉を聞いてくれて、こちらを向いてくれて舞い上がるも一瞬だけ。すぐに用件を言わないと今度こそ完全追い出し食らいそうだと予見した私は用件を口にする。

「竜牙様のお側にいたいです!!」
「………」

 沈黙はいつものこと。私は珍しく苦い顔をする竜牙様をにこにこと眺めていた

「…馬鹿につける薬がないとはよく言ったものだな」
「ホントですね!」
「…貴様のことだぞ」
「やだなぁ知ってますよ!」

 私が竜牙様馬鹿なことなんて最初から分かってることですよ!と気合いをいれて力説すると、私を上から下まで無表情で眺めた竜牙様は付き合ってられんと言ってごろりと長椅子に横になって目を閉じた。

恋せよ、乙女!

(でも本当に追い出さないのって、期待していいんですか?)