私は不思議で仕方が無い。何がというと、それはもちろん『何故、川原にある公園でヨハネスに膝枕をしているのか』ということだ。
「ヨハネス」
「何だ?」
「いろいろ疑問がありすぎるんだけど、何から聞いたらいいかな……」
「おいらに聞かれてもなー」
私の膝もとで寝がえりを打った彼はごろごろと猫のように喉を鳴らしてまた少し丸くなる。ぽかぽかと日差しが暖かく、ヨハネスでなくても喉を鳴らして寝転びたい気持ちになる。最初こそちくちくしていた芝生も、感触に慣れた今では温かな自然の布団も同義語。
「あー、もうどうでもいいや、私も眠くなってきた」
どうして何故私を連れて来たのかという質問は眠気に負けてどこかへ消えた。いい天気に芝生で、しかもそれはもう幸せそうに寝ている人物が膝もとに居れば眠気が移るもの。私はあくびを一つして腕を上に振り上げて背伸びをする。
「あーっ!お前!!」
背後から突然大声がして、私は意味もなく小さく縮みあがった。振り返ると複数の人間が結構厳しい人相でこちらに走ってくるではないか。
意味のわからない私は困惑して膝もとの人物を小さくゆする。
「ちょっと、ヨハネス。アンタの知り合いじゃないの?」
「んー……知らない……」
「見つけたぞ!!この間のネメシスの奴!」
駆けてくる人物をろくに見ずに、ただ眠いだけのヨハネスはごろごろと私の方に顔を摺り寄せてくる。そんなことをお構いなしの赤い髪に白マフラーの先頭の少年がこちらを指を指して叫んだ。
「ほらアンタ関連じゃないの」
「うー……おいらは今眠いんだよ……邪魔するな……」
「……そういうことらしいので用事はまた今度でいい?」
「……は?」
私とヨハネスのやり取りに呆気をとられたらしいマフラー少年の後ろから、今度は眼鏡の少年が呆れた表情で一歩前に出る。
「で、ですけど、一応ネメシス相手だからこちらは放っておけないんだけど……」
なんとか起こしてくれないかという視線をこちらに向けてくるが、私にはどうにもならない。寝起きのヨハネスって怖いのだ。率直にそう言って最後に一言付け加える。
「悪いけど、無理」
「……そっか……」
「……えーっと……」
お互い困って微妙な空気が流れる中、寝ている当人がおもむろに起き上がった。目を見て分かる、寝ぼけているらしい彼は私に正面からいきなり抱きついてきた。
「うわっ、ヨハネス!?」
「うー……はおいらのだ……やらない……」
遠まわしに告白されて顔が真っ赤になると同時にヨハネスは私に抱きついた状態でまたすやすやと寝てしまう。心臓が破裂しそうなほど動悸が激しくなってテンパっていると、目の前の人物たちはさらに困って二人揃って鼻を掻く。
「えーっと……、また今度、出直してくるな!」
「お、お幸せに……」
苦々しい笑顔を置いて帰って行った。