久々に会った水地は、干からびていた。これは比喩表現なので実際に彼が水分たらずでしおしおぷーになっていた訳では断じてないが、雰囲気が干からびていたといえばいいのだろうか。
「……おーい」
とにかく何かに渇望して限界を越えたのか、彼は与えられた暗い部屋で伸びていたのだ。
「……………」
返事はない。もう少し近づいて、しゃがみ込む。人差し指で肩をつつく。
「おーい……水地ー」
「…………」
屍のように動かない。私は肩から頭に人差し指を移動して、先ほどより強くつつく。
「水地ー……!?」
つついていた右手首を突然がしりと掴まれた。驚いた私が固まったまま彼を見ると、右手首を掴まえている右肩からゆっくりと動き、さながらゾンビの様に彼は起き上がった。
「ぎゃあ!!ちょっ、お、起きてたの……!?」
「…………」
「ど、どうした何が……!」
慌てる私を傍目に水地は掴んだ私の手首からまさぐるように腕を伝い始め、たどり着いたとばかりに腰元に抱きついた。
「……はぁ……」
「……水地」
「…………はぁ……」
ぎゅっぎゅ、と何度か抱きつき直して彼はため息をつく。私には何が何だかさっぱり分からないが、とりあえず動く気配のない彼を諦めて床に座り込む。その間もしっかりと私を掴んで離さない。
「……なんで来なかったの」
呟いたの言葉に私は動きを止める。腰元の水地はこちらを見ないまま続ける。
「……忙しかった、から」
「何それ」
「いや何も……」
「僕より大切なものなんて、捨てなよ」
そう言うと、腰回りがきゅっと締まる。
もしかして彼は寂しかったのだろうか。だとしたら不謹慎ながら水地以外の全てを捨ててしまおうか、だなんて魔が射した。
「ごめんね」
そう言うと、腰回りがまたきゅっと締まった。