「分かった、手を組もう」

 そう頷くアグマとバオの背中を、私は複雑な心境で見守っていた。
 ネメシスと手を組むこと。それがいかに危険な博打かということは、二人だって知っている。それでも世間に追いやられた私達はいかなる危険があろうとも百華ベイ林拳のために尽くすことを決めたのだ。

!」

 ネメシスに荷担すると決めてから用意された部屋に向かう途中に呼ばれて振り返ると、小走りでバオがこちらに向かってきていたので立ち止まる。

「バオ、どうしたの?」
「どうしたのじゃない!お前、なんで紛れ込んできたんだ!」

 何時もより鋭く目を細めて睨まれる。眉間に思いきり皺もよって、完全に不機嫌モードなのが見て取れる。
 それはそのはず、私は百華ベイ林拳の者達が隠れ住む村で残っている予定だったのだが、バオを追いたいあまりに密かに抜け出、元より村をバオ達と発つ予定だった一人と入れ替わってここまでやってきたのだ。

「大人しく待っていろと言っただろ!!」
「善処するとしか言ってない」
「女の癖に大人しく待つことも出来ないのか!」
「それ差別。私これでもアグマ、バオに続いて三番目に強いブレーダーなのにおいて行かれるなんて納得いくわけない」
「うっ……」

 圧されて言葉につまった彼はあちらこちらに視線を漂わせて、次の言葉を考える。私がまっすぐ見つめていると、1分ほど唸り続けた後ちらりとこちらを見て観念したようにため息をついた。

「……お前が心配だったから置いてきたってのに」

 思ったより早く飛び出した彼の本音に私の目は点になった。

「俺達がこれから、どれだけ危険なことをするか分かってるだろ。だから……」

嫌 だったんだ、巻き込むのは。そう続けたのは羽虫の羽音と同じくらいの声の小ささ。不機嫌そうに見えていた彼の標準が、急に自分を攻めているような後悔の標準に見えてきたから私は思わず彼に抱きついた。

?」
「私だって心配だからお互い様。それに、私後悔してないし」
「……俺がしてるんだが、後悔」
「それでもいいの。どんなことをするにしたってバオが傍に居てくれるなら」

 何それ、告白だな。と言いながらバオが笑う。私の背に手を回して彼は嬉しそうな吐息でため息をついた。

「……馬鹿だなお前」

堕ちた先に君がいるなら

(私も一緒に堕ちましょう)