「もう、あんたなんでそういう重要なこと忘れる訳!?」
「ええ!僕だけのせい!?確かに忘れてたの悪かったけど!」
「喋っているなら走れ貴様ら」
「会長に命令すんな書記!!」
私たち生徒会は全力疾走していた。予定管理が仕事の副会長の「しまった!忘れてたよ!」という15分前の発言を発端に、とある予定をすっかり忘れていた私たちは所定地に向かって走っていたのだ。
「しかし全員揃って忘れていたとは、やってしまったな」
「笑い事!?つか弁当食いながら走るなよ!行儀悪いよ!」
「うわあああ!あと5分しかないよ!!」
「うるさい奴らだ。で、俺らはどこに向かっている?」
「目的地分からんなら先頭走るな書記ぃいいいい!!!」
目的地も分からずに先頭を走る書記、時計を見ながらひたすらわたわたしている副会長、弁当食べながら器用に走る会計。全員につっこみを入れながら走る会長の私。体力は限界。
目的地に着いた時には私は肩で息をしながら半死していた。目的地――姉妹学校の生徒会室の前。交流文化祭の為に合同生徒会を発足する為の顔合わせだった。
「軟弱なやつめ」
「黙れ、体力、バカ……!」
「会長大丈夫?はい、水」
「……おー……」
会計が食べていた弁当についてきた水を飲んで、私は生徒会室の扉と向き合った。
「んだと!?やるかぁ!?」
「浅はかなり……!!」
「HOOO!!やればいいヨ!」
「ちょっ……!!煽らないで止めて下さい!」
「上等だ!今日こそやってやるぜ!覚悟!」
「望むところ……!!」
「止めなさい!げばっ」
中はギャーギャーうるさく、普段の私達といい勝負だ。
「うむ、時間ジャストだ」
「よっしゃ侵入~」
スライド式の扉を開け放って、中の喧騒に負けないように叫んだ。
「たのもー!!」
中の全員がぴたりと止まって此方をみた。中では目つきの悪い男子と長い黒髪の女子が取っ組み合いの喧嘩、金髪のバンダナ男子があおり、眼鏡男子が止めようとしたとばっちりにぶっ飛ばされていた。
「……もしや、向かい学校の生徒会ですか?」
「え、ええまぁ……」
「僕たち生徒会とイイ勝負にカオスな所みたいだね」
「馬鹿か」
「なんだとコラァ!!」
こっちの書記の言葉に向こうの目つきの悪い男子がつっかかってくると、書記はやるか!?と挑発したので、私は彼の方を見ずに冷ややかに言った。
「会計、黙らせて」
「おう。書記、どうどう」
「俺は馬ではない!!」
私達のアホノリ加減に向こうの会長は安心したようで、目つきの悪い男子を金髪バンダナ君にひっつかまえさせて黙らせると、立ち上がり眼鏡を上げた。
「これから協力関係になるわけです、まずは自己紹介から始めますか」
「そうね」
全員が顔を合わせながら(書記は顔をそらせていた、子供め)私が口を開いた。
「私は生徒会長の」
「えーっと、副会長の大山です、よろしく」
「会計の松下だ」
「…………」
黙る書記のわき腹に肘を入れる。わき腹を抱えて悶絶する書記が小さくつぶやいた。
「書記……野田だ」
私達の自己紹介を聞いて、眼鏡男子が一歩前にでる。
「私が会長の高松です」
「副会長、椎名」
「俺は会計で、藤巻だ」
高松君は眼鏡を上げて、金髪バンダナ君を手で指す。
「彼は書記です。ハーフなんですが、本名が難しいので愛称のTKと読んであげて下さい」
「Yeah!!ヨロシク」
一通り握手を交わすと、高松君はにこりと笑って室内の円上に配置されている机達を指す。
中で取っ組み合いの喧嘩をしていたというのに机の配列は綺麗だ。随分器用な喧嘩をしていたようだ。
「さぁ、合同文化祭の話し合いを始めましょうか」
「そうしましょ!」
早くも交流していた彼らに私たち会長コンビが促すと、皆円上の机についた。
結構みな似たようなタイプで、私はほっとした。これから先、無条件でうまくやっていけそうな気がして、私は未来に胸をときめかせた。