初めて出会った時。
日向くんを経由で、私が戦線にきて1ヶ月目。初めて見た藤巻くんは、それはもう身長が高くて、目つきの悪い顔が余計に怖く見えて、私は若干ビビっていた。
しかしながら話して見ると何ら普通で、藤巻くんは女性とあんま話さないのは絶対損してる、と未だに思う。話したら絶対にモテるからだ。
「あれ、。どうした?」
「お仕事で藤巻くんにお届け物なんだけど、彼は?」
「さっきまでいたんだけどな。話途中だったからすぐ帰ってくんじゃねー?」
校長室に居た日向くんに聞けばそう返ってきて、なんだガッカリした。仕事で渡そうと思っていたものをちょこんと手の平に乗せながら、すれ違いにがっかりして肩をおろすと日向くんが笑って私の頭をかき混ぜた。
「ま、頑張れよ」
正直、これを機会に藤巻くんと話したいというのが本音。藤巻くんとは話せない訳ではないが、色恋的な感情が混じるとどうも口が鈍るのだ。日向くんが背中を押してくれた通り、頑張らないと。
「あ?じゃねぇか。どうした、仕事か?」
後から藤巻くんの声が聞こえて、予想外に戻って来るのが早かったので私は不覚にも驚いてしまった。そうだ、仕事でものを渡しに来たんだったと思い出すと、立ち上がる。
近くに駆け寄って見上げる彼の、地味と言われる癖整った顔は私の動悸を促進するには十分すぎて、私は噛まない用に一度唾を飲み込んだ。
「これ、こないだ壊れたのの代用品なの。どうぞ」
「おう、悪ぃな」
「うん。それじゃ…」
結局それしか言えないの!?と自分を激しく責めながら、別れを告げてしまったからにはと校長室を出ようとした。
すると急に左手首が圧迫感を覚えて、掴まれたことを知る。
「、てめぇこの後暇か?」
「な、なに?」
「一緒に食堂いかねぇ?」
不意をつかれた藤巻くんの発言に驚いたが、小さな幸せがじわじわやってきて、私ラッキーなんじやないかと思えたら、急にテンションが上がってくる。
「行く!行きたい!これ片付けてくるから、待ってて!」
そう言って私は手元に持っていた残りの急ぎでない仕事を置きに、うきうきしながら走った。その後の教室で話されてる事を知らずに。
「今のの幸せそうな顔ときたら…。藤巻、お前本当に好かれてるなぁ」
「…あれは、反則だろ」