「……おい」
「……あい?」

 ぽかぽかと、日差しが柔らかな日。涼しい風が髪を揺らすのが心地よい、学校の時間割でいうお昼休みの時間。私は呼ばれたのでごろりと寝返りをうって彼の方を見た。寝転がっているせいで芝がちくちくと頬を刺すが、それすらも穏やかな時間だといえるほどに私は満ち足りていた。

「あいじゃねぇよ!なんでてめぇはついて来んだよ!!」

 穏やかな時間を裂くように、藤巻のツッコミ仕様の叫びが空気を震わせたが、私は全く動じずにふにゃりと顔を綻ばせた。

「そこに藤巻がいるから」
「なんだよその、そこに山があるから登るんだ的理由!?」
「藤巻ツッコミ方が日向や音無に似てきたねー……」

 しかし私はのんびりとした口調で彼の言葉に言葉を返す。普通に返事をしてあげたいが、お腹が満たされているため眠気が助長されてそれは叶わない。
 校長室で会議が終わった後、藤巻について行って食堂に行った。彼の隣を確保して、お昼の途中で彼のカレーを颯爽と一口さらったりと賑やかな昼食をすまし、ついた外の穴場で昼寝。引っこ抜かれたらついていく某植物しかりの行動をする私に、藤巻としてはツッコミ所が多くて昼寝どころじゃないらしいが、私は眠い。

「寝んな!」
「無理眠い……藤巻も寝なよ……」

 こんないい天気でお昼寝日和なんだからと空を指差せば、それにつられるように彼はゆっくりと天を仰いだ。

「…………」
「……ね」

 遠くまで澄んだ青空がどこまでも広がっていくのが目に一杯。それは藤巻を落ち着かせるには十分過ぎる効力を発揮して、彼はしばらく後ため息をついた。

「……そうだな」
「でしょー……」
「はー……なんか色々どうでもよくなったぜ」

 ごろりと私と同じように寝転がった藤巻の背中が見えた。後ろから見た彼の髪の毛がさわさわと揺らいでるのを目で追っていると、まるで催眠術みたいに眠気がさらに強くなったので、私はゆっくりと目を閉じた。

昼下がり

(この世で最も尊い無駄な時間)