TKは馬鹿っぽくて勢いで恋愛やアプローチをするタイプに今まで見えてきたが、最近実は違う気がしてきた。
「それじゃ、部隊編成決めましょ。希望は?」
「僕は音無さんと一緒だ」
「最早希望じゃねーよソレ」
直井と日向が一回のボケツッコミを皮切りに睨み合いを始めた。校長室は相変わらずの喧騒に包まれて、ゆりが言っていた話が一時的に騒ぎの中に消える。
(……やっぱり見てる)
その中、傍観を決め込んだ私の視界に入るのは此方をじっと見ているTKだ。『やっぱり』という単語を使っても許されるくらい毎度のことだった。その上で最近気付いたことは一つ。
――TKは実は私が好きなのだ、という事実だ。
自惚れだと相当恥ずかしいが、仕草や視線からしてもかなり確信高い。何よりも実は『裏付け済』である。
「TK」
「っ!?」
チ ラリと視線をよそにやっていた隙を見て、私から声をかければ驚いたTKは肩をびくんと震わせてこちらを振り返った。その様子に小動物を連想した私は笑う。
「ね、あのさ、今回の任務一緒に組もうよ」
「オレ!?Why?」
一瞬嬉しそうにした様子が手に取るように分かり、私は何故だと聞き返してくる彼の心臓上を人差し指でつついた。
「嫌ならいい」
「NO!嫌じゃない!」
くるりと踵を返した私の腕をTKは掴んだ。確信を持った私は意地悪を止めて彼に向かってにこりと笑った。
「はいはーい、ゆりっぺ!私TKと組むからよろしく!」
私が宣誓するように声を張り上げると喧騒が止む。その真ん中のゆりっぺが目をパチクリと瞬きを繰り返して此方を見た。
「いいけど、珍しいわね。どういう組み合わせなの?」
「私たちラブラブだから」
「!?」
その発言に校長室が凍りついた。皆が私とTKを見比べてまさかといった視線を向けてくる。私は動じずにそういうことで、と言ってTKの手を引いて校長室を出た。扉を閉めて廊下にでたところで彼が私の両肩をつかんだ。
「Ahー……」
「なーに」
「What's do you mean……?」
「どういう意味かって?」
「Yes」
「どうもこうも…」
両肩の手をはねのけて、私は喧嘩を売る不良みたいに両手で彼の制服の胸襟を掴んで引き寄せた。下から見上げるように、一瞬だけ、それは触れた。
「!?!?」
「あらま、珍しい。TK顔が真っ赤だよ」
「k、k、kis……」
言いかけた彼の唇を人差し指で抑えて止めた。言ったら雰囲気ぶち壊しよ、と本当に小さく呟いて、私は笑った。
「ほら、ね。私たちこんなにラブラブだものね!」