私は余裕ぶっている奴が嫌いだ。……というか、余裕のあるやつが嫌いだ。余裕のある奴は心の奥底にある余裕を吐きだしつくして必死になればいいのにと思う。
「Hello!」
つまり私の目の前にていい笑顔でこちらを見て(いるかは分からない、何せ目は布覆われている)いるTKもその対象に入る。
「……はろー」
やる気のない返事を返して一瞥する。そしてさっきまで行っていた銃の組み立て作業に戻ると、ソファーに座っている私の周りのあっちこっちを図体のでかい影がうろちょろし始める。最初こそ気にしないようにと心がけていたのに、その影は一向に落ちつく気配を見せないので私はイライラし始めた。
「ねぇ、TK」
「What?」
組み立て途中の不格好で完成形をまだ見せていない銃に向き合ったまま彼を呼べば、視界でせわしなく動き回っていた影がぴたりと止まる。
「気になるから大人しくして」
「Oh,気にしない!」
「気になるんだっつーの」
私に怒られてもいつも通りの余裕っぷりを見せるTK。どんな顔してるんだと銃から視線を上げればこちらを見ている笑顔のTKと視線がカチ合う。そして彼はにっこりといつも通りの笑顔。
「…………」
瞬間的な殺意を覚えた私はわざとらしく視線を下に逸らして顔を下げる。4秒前まで見ていた視界が一気に戻ってきて私は作業を再開させた。
「Hey,!」
「うっさい邪魔するな」
「……I'm free」
「そーですか」
暇を主張する影を振り払って、無関心に手元に向かう。それでも影は私の周りをあちらこちらと動き回る。そしてついに暇すぎたのかTKは鼻歌を歌いだした。もちろんそれは私の苛立ちのメーターを上げるのに効果抜群。
「ッやかましい!!!」
「!?」
怒りにまかせて立ち上がる。びくりと右手右足を上げた奇妙なポーズで時間停止しているTKに乱暴な足取りで近づく。そのまま近づいていく速度で右手をのばして彼の制服の襟をつかみ上げる。引き寄せる。顔を至近距離に寄せる。
「うるさいよ、黙ってて」
そうしてまつ毛とまつ毛が触れ合う距離まで近づいて、そのついでに颯爽と彼の唇を奪う。
「…………」
「間抜け面。でも黙ったね、よし」
すぐさま離れた時のTKの顔は、真っ赤で呆然としている。数秒して酷く動揺したのか私に向かって両手を構えて金魚のごとく口をぱくぱくと動かした。
「……、っ……!?」
声にならない悲鳴で私に意義を唱えているらしいが、私は彼の余裕を奪い取ったことにもちろん満足して、にんまりと笑った。
「いやぁ、静かになっていいねぇ」
「……っ、!!」