「ドナ、大人の階段のぼらない?」
「……えっ?」

 ドナテロが大好きだ。好きすぎて、胸のドキドキは止まらないし、ひどいときは夜も眠れないし、最悪なときは食べ物もろくにのどを通らなかった。
 そんな彼に告白してついに、私たちは恋人になった。片想いから両想いへ。するとどうだろうか、片想いで煩っていた恋の病は、治っていくどころかどんどんと悪化して、そして最後にたどり着いたのが……

「大人の階段上ろうよ」
「……ええと、一応聞くけど、どういうこと?」
「セックスしよう」

 ここまで直球を投げてくるとは思っていなかったのか、ドナは傾けていたココアを吹き出した。吹き出して、せき込んで……そして、落ち着いてからモニターに向かっていた体を反転させ、こちらを見た。両手をしっかりと私の肩に置き、深く息を吸い込む。

「女の子が、そんなこと言うもんじゃないよ」
「……てっきり照れるかと思ったのに」
「あのねぇ……」

 頭を抱える彼と、ケロリと下ネタを吐き出した私。残念ながら、彼の部屋でふたりきりのため、第三者によるつっこみは入らなかった。
 ちなみに私の反応予想図では、彼は顔を真っ赤にして顔を手で多い「なにっ!?突然なに!?」といういじらしい反応を見せてくれるのかと期待していたのだが、どうやらそれは不正解だったようだ。

「直球過ぎて、逆に恥ずかしくなくなったよ……」
「それは大変だ。恥じらうような言い方を考えなくちゃ行けないね」
「……たとえば?」
「……ドナに、私の全部をあげる。……とか?」

 恥じらった風にそういうと、彼は目をぱちくりと瞬かせて顔を赤らめた。どうやらこちらが正解だったようだ。

「……いやいや、でもだめだから」
「だめなの?18歳はNGだから?」
「そうじゃなくて……」

 ドナは、少し太い人差し指を私の胸にとんと当てた。

「きみは知らないの?亀が発情したらどうなるか。僕たちのものがどんなものか」

 脅かすような言いぐさに、今度は私が目を瞬かせた。僕たちの『もの』という意味は、もちろん今の話の流れと照らし合わせれば不純な意味合いだとすぐにわかる。ドナテロの自身、男性の象徴、性行に使用する器官。

「知ってるよ」
「えっ……?」
「検索したし、動画でも見たし、そもそも生態を知りたくて大学まで行ったし」
「どこまで行ってるんだよ!」

 その時に学んだことを思い出す。彼が心配しているのは要するにその大きさである。普段排泄口におさまっている性器は、その必要に迫られて外へ出た時、頭部よりも大きく膨らんで現れる。ミュータントになった彼らにそれが当てはまるのかは定かではないが、もし本当に頭部より大きくなるのだとしたら、それはもう完全に人間のそれをはるかに上回った大きさになるだろう。つまりは規定外になるのだが、残念ながらそれを受け止める私はごく一般的な人間の女性だった。
 ドナが心配しているのは確実にそれである。

「まぁ、なんとかなるんじゃないかな」
「ならないよ……」

 自身の脅しがまるで効いていないことに、彼は頭を抱えただした。きっと今頃は、私をどう説得するかを考えているのだろう。
 かという私は、頭の中で大きなものが入った時のシュミレーションを考えた。どうなってしまうんだろう、どう壊れてしまうんだろう。そう考えていると、そんな死ぬ時のことよりも、ドナとつながることへの喜びが先に湧き上がってきて……結局、シュミレーションはその意味を失ったのである。

「もし最中に死んじゃったら、腹上死ってことになるね」
「は?」
「……うん、ドナの腹の上ならいいかもしれない」
「ちょっと、僕は嫌だよ!僕のせいでが死ぬなんて」
「でも、愛し合いたいし」

 私の言葉に、ドナはうっと小さく呻いた。彼も脳内でなにかシュミレートしたんだろうか。もう反対する声は上がってこなかった。赤面しながら目をそらす彼に、にっこりと笑みを浮かべて両手を広げた。

「腹上死上等!さぁ、ドナ!!」
「だから、嫌だって!そんなことに覚悟をするくらいなら、良い方法が見つかるまで耐えることに覚悟を使っておいて!」

腹上死すら厭わない

(なのに、年下におあずけを食らいました)